ハトヤブの考察レポート

世の出来事の根本を掘り出して未来を予想する

公明党連立離脱の真相考察

 皆さんこんにちは、ハトヤブと申します。現在「日中相互不信のメカニズム」シリーズの続きを書いているのですが、いまいち筆が進まないので、今回は時事ネタから短めに論じようと思います。

公明党が連立離脱

 2025年10月4日の自民党総裁選で、多くの予想を覆す形で高市早苗氏が選出され、初の女性総裁が誕生しました。かねてから批判の根拠になっていたジェンダーギャップ指数を改善できるこの慶事に、国内のリベラルを標榜する界隈は天邪鬼の如き反応を示します。特に社民党福島瑞穂氏は「うれしくない」と明言し、批判的な姿勢を示すなどイデオロギー優先の態度をとっております。オールドメディアも敵対的で、とある通信社のカメラマンが「支持率を下げてやる」と口走るほど、敵愾心を高めている実態が明らかになりました。それらは岸田政権、石破政権と続いたリベラル傾向が、高市氏によって覆されることを懸念していることが主因でしょう。

 同じように高市氏の総裁選出に懸念を表明している勢力がいました。公明党です。同党の代表斉藤鉄夫氏は総裁選が決まった9月の段階で「保守中道の理念や政策と相いれなければ連立は組めない」と異例の発言をしておりました[1]。そして高市氏が総裁になると靖国参拝に懸念を表明するなど、明確なけん制をするようになりました[2]。そこで高市氏は靖国参拝を見送るなど、タカ派のイメージを払しょくする歩み寄りをしました。しかし10月10日、斉藤代表は正式に連立離脱を表明、26年の歴史に幕を閉じました[3]。

離脱ありきだった「企業献金規制案」

 その背景として斉藤氏が言及しているのが「裏金問題」と「企業献金問題」でした。特に企業献金について野党側が大幅な規制を求めており、連立与党である公明党も促していたが、自民党が受け入れなかったから、連立を維持する意義を失ったというもの。

 ありきたりな「政治と金」問題による自民党の不始末に公明党が耐えられなくなったというストーリが成り立っているわけですが、これには裏があり、複数の識者の見解から自民党が受け入れることができない要求を突き付けていたことが分かっています[4],[5]。具体的には企業献金を国会議員と都道府県連のみに限定するもので、自民党がこれを受け入れると現状献金を受け取っている県議会議員や市議会議員から強い反発が予想されるため慎重にならざるを得なかったのです。

 そもそも公明党が「我慢して」自民との連立を維持してきたのは、国土交通大臣というポストを長年独占し、その利権を享受していた背景があります。国土交通省は日本のインフラ整備を管轄しており、公共事業などにおいて大きな影響力を持つので、ここを抑えていれば公明党は単なる「下駄の雪」ではなく、自民党のブレーキ役として存在感を示すことができたのです。

 実際、「裏金問題」が表面化したのは岸田政権からですが、企業献金の規制強化には慎重であり、それは石破政権でも同じでした。それでいて高市氏が総裁になった途端に、我慢ができなくなったというのは、少々タイミングが良すぎるような印象を受けます。総裁選前や総裁選直後の発言を鑑みても、高市氏だから公明党は連立を解消する決断をしたといえるでしょう。

連立解消の真意は中国問題?

 ここからは公明党がなぜポストを犠牲にしてまで、高市氏が総裁を務める自民党との連立解消に踏み切ったのか考察して行きます。先述の通り、斉藤代表は総裁選で選出されたばかりの高市氏に対して靖国参拝への懸念を表明していました。それに対し、高市氏は即座に参拝見送りを決定し、党内の保守派議員もその決定に理解を示しています。こうした自民党の弱腰に中国問題グローバル研究所の遠藤誉氏は「親中政党である公明党にコントロールを握られ続ける自民党」と皮肉ったコラムを書いたほどです[6]。

 しかし自民党の歩み寄りもむなしく、公明党は連立離脱を突き付けました。その理由として高市氏の次の行動が決定打になった可能性が考えられます。

内モンゴル自治区の人権問題

 一つ目の理由は9日の国会内で開かれた中国・内モンゴル自治区の人権問題関する国際フォーラムに文章でメッセージを出したことです。その内容は「今もなお、南モンゴルにおいて、中国共産党による弾圧が続いていることに憤りを禁じ得ません」というド直球の中国非難でした[7]。『南モンゴルを支援する議員連盟』の会長としての発信でしたが、首相指名の可能性がある総裁という立場もあって、中国政府は激しく反発し、厳重抗議を表明しております。

 これが公明党の連立解消を後押しした可能性があります。遠藤氏が指摘する通り、公明党は伝統的な親中政党であり、岸田政権の時はウイグル問題や香港問題において、中国を名指しで非難することを指し止めた張本人です。それだけあって名指しで中国非難をかまし高市氏を首相として認めることは、中国との友好関係を崩すことになるために、受け入れられなくなったと考えられます。

台湾の頼清徳総統に親書

 もう一つの理由はまさに10日、超党派の議連である日華議員懇談会が台湾を訪問し、頼清徳総統に高市総裁からの親書を手渡したことです[8]。高市氏は台湾との関係を重視しており、4月に台湾を訪問して頼清徳氏と会談しております。この点は2024年9月の総裁選前に訪台した石破氏と同じですが、石破氏は首相になってからは中国との関係を重視し、ちょうど一年前に李強首相との会談で「一つの中国政策を堅持して(台湾防衛を掲げるアメリカの)挑発に共同で対処する」と約束してしまいました。そして台湾に対してSNSでのメッセージは表明しても、親書を送るようなことはありませんでした。

 しかし高市氏は議連を通じて親書を頼氏に送りました。これは中国からすれば完全なレッドカードです。ただでさえ地方議員レベルの交流さえ断固反対しているのに、親書を送ることは事実上の政府間交流になるため、到底受け入れられないでしょう。親中政党である公明党もそれをよく知っており、やはり高市氏を首相として認めることはできないと判断した可能性があります。

自民党大転換の兆し

 以上の論点から、公明党が26年に渡る自公連立の解消を決断したのは、同党が骨の髄まで親中政党であり、中国のためには国土交通大臣のポストさえ犠牲にすることも厭わない背景があったからと結論付けることができます。近年は公明党議席が伸び悩んでおり、その背景が支持基盤である創価学会の高齢化や組織力の低下にあると指摘されています。退潮にある組織は自己保全のために先鋭化する傾向があるので、それが公明党の「平和主義」の根幹である親中政策を守る方向へ駆り立てたのでしょう。議席が伸びない責任を自民党に押し付けるいい機会でもありますしね。

 これは自民党にとって与党を維持する固定票を失う危機である一方で、古い体質を見直す大転換のきっかけにもなると思います。遠藤氏が指摘したように「親中の公明党にコントロールされていた」しがらみから抜け出すチャンスになるのです。本ブログで何度も繰り返しているように、もはや自民党親中派が考えるような米中バランス外交は、非常に困難な状況になっております。アメリカは台湾周辺の安定のために、日本の積極的関与を求めていますし、中国も経済だけの日中関係では満足できずに、政治や安全保障への干渉を強めております。自民党公明党を抱え続けることは、このジレンマに悩まされ続けることを意味しており、最終的には米中双方と国民からの信頼を失うリスクをもたらします。公明党と手を切ることが自民党解党的出直しを実現する大きなファクターになるのです。

 当然これは高市氏が首相になれないリスクも高めるものです。しかしこれを超えられないようでは日本の改革はおろか、自民党の改革もできないでしょう。仮に自民党が下野した場合、首相は立憲民主党の野田代表か、国民民主党の玉木代表になると思われますが、晴れて政権交代を実現した彼らに権力に酔う暇などありません。前回解説したように現在の日本政治には特大級の「地雷」がいくつも仕掛けられており、公明党と一緒にガラスの天井を補強した彼らは、その中で頭を抱えることになります。正直言って政権運営の経験が浅い彼らに、その苦境を切り抜けることは困難です。日本の改革が進まなければ(もしくは間違った『改革』をすれば)衰退は避けられず、やがて地政学における大きな危機に直面することになるでしょう。

 自民党公明党を克服することは、日本の危機を突破する第一歩なのです。

参考情報 [1]::自民新総裁に公明が異例の注文「連立は保守中道の方と」斉藤鉄夫代表が言及,西日本新聞,2025.9.12.,https://www.nishinippon.co.jp/item/1398699/ [2]:公明・斉藤代表、首相の靖国参拝に懸念「多くの支持者が心配」高市自民新総裁と会談,産経新聞,2025.10.4.,https://www.sankei.com/article/20251004-KEMAZRIWL5N6PNBJ55NAD4B2X4/ [3]:「自民の不祥事を説明するのは限界」公明・斉藤代表、連立離脱政治とカネ対応で不満強調,産経新聞,2025.10.10.,https://www.sankei.com/article/20251010-LTMFLCXAYZFXBAPFZFQQ73YO5E/ [4]:田崎史郎氏,自公〝分裂〟を解説「もし公明案を飲んでいたら自民党内で反乱が起きていた」,東スポWEB,2025.10.10.,https://www.tokyo-sports.co.jp/articles/-/362695 [5]:自公決裂26年の歴史に終止符公明党が強気のワケ今後は?野党は?,テレ朝NEWS,2025.10.10.,https://news.tv-asahi.co.jp/news_politics/articles/000458968.html [6]:遠藤誉,靖国参拝公明党に譲歩した高市総裁結局は中国のコントロール下になり続ける道を選んだ自民党,中国問題グローバル研究所,2025.10.8.,https://grici.or.jp/6730 [7]:自民高市総裁「南モンゴルでの中国共産党による弾圧に憤り」フォーラムで声明「関心を」,産経新聞,2025.10.9.,https://www.sankei.com/article/20251009-RFTDKUGOYNDK5GNL2KPV4U4O4I/ [8]:台湾総統高市氏の親書日本議員団が面会―台北時事通信,2025.10.10.,https://www.jiji.com/jc/article?k=2025101001126&g=int