皆さんこんにちは、ハトヤブと申します。先日は公明党の自公連立からの離脱というビックニュースに直面して、私なりの視点から考察を行いました。普段はじっくり時間をおいて考察の再検証を繰り返しているのですが、今回はそれをしない「飛ばし記事」のようになってしまったことを申し訳なく思います。そこで今回は記事投稿後に得た情報をもとに私の論点を補足しつつ、別視点での離脱の背景を探ってみます。
やはり「『政治と金』だけが理由」論には無理がある
情報を集めて思ったことは、やはり政治と金、特に「裏金問題」や「企業献金」だけが理由であると結論付けるのは無理があるということです。公明党としては「国民目線」や「清廉潔白」というイメージを前面に出すために、そのようなストーリーを描く必要があるのでしょう。それにアンチ安倍&アンチ高市の界隈が便乗しているわけですが、違和感が残るのですよね。自民党議員の中にも「取ってつけたような話」だと指摘する方がいらっしゃいます[1]。
橋下氏「ちょっと違うんじゃないの?」
違和感を感じたのは他にもいらっしゃるようで、維新の会の立ち上げ人である橋下徹氏が、フジテレビの番組「日曜報道 The PRIME」にて、公明党の斉藤代表に「なぜ総裁選の時に(企業献金の制限などに関する)メッセージを出さなかったのか」と問いただしました[2]。
これに斉藤氏は「他党の選挙に介入するイメージを持たれたくないし、介入しなくない」ともっともらしい返答をしていますが、総裁選前の9月12日の時点で「保守中道の理念や政策と相いれなければ連立は組めない」と異例の発言をしております[3]。それが高市氏を念頭に置いていると多くの人が認識しており、介入したくないという彼の発言は説得力に欠けています。
それに「政治と金」問題を提起しても、特定の候補への支持になるとは言えません。実際、総裁選では候補者たちが「企業献金規制」に踏み込むことはありませんでした。公明党と関係が良好とされる小泉進次郎氏でさえ、早急な献金規制はむしろ良くないと東洋経済のインタビューで論じていたくらいです[4]。
そういった点では離脱を言い渡された高市氏の「私が総裁でなかったら違ったのか?」という質問に、「誰がなっても同じ」と答えた斉藤氏の言動には一貫性があるように見えます。しかし、やはり橋下氏が言うように「ちょっと違うんじゃないの?」という印象はぬぐえないでしょう。いかに選挙において「清廉潔白」を掲げているとはいえ、自民党に驕り高ぶった側面があるとはいえ、このタイミングであっさり切れるなら、なぜ「裏金問題」が発覚した時に連立離脱しなかったのでしょうか?
石破氏の独断を利用
なお離脱表明後、斉藤代表がYouTubeのサブチャンネルにて「背景」を話していらっしゃいます[5]が、その中で言及されている、1か月半前からやっていたという自民・公明・立憲での「企業献金規制合意」。あれは首相続投に固執していた石破氏が、野田氏と「隠れ大連立」を模索していた時期のものです。そこで進められた話は、自民党内で全く議論を経ていない「石破氏の独断」であることが分かっており[6]、それまで保守改革派だけに留まっていた「石破おろし」を拡大させた要因でもあります。
いくら新総裁になったからと言っても、独裁者ではないので上意下達で好きにできるわけではありません。公明党がそれを知らないはずはないので、その「合意」をあえて高市氏に突き付けたことは、「受け入れられない」ことをわかった上で利用したと言わざるを得ないでしょう。自民党の腐敗が問題だと言えば、それまでですが、そんなやり方で長年担ってきた国土交通大臣のポストを捨てることは、割に合わないように見えます。公明党が野党に転じて自民党は確かに打撃を受けますが、それ以上に公明党にも大きな打撃になるからです。
滲み出る本音、暴露する者
そんな公明党の本音がうかがえるのが、再連立にまつわる言及でしょう。11日のYouTube番組「ReHacQ(リハック)」にて斉藤代表は「再連立を検討するタイミングは次々回の首相指名選挙になる」との考えを示しました[7]。一部のSNSでは「これは『条件が整えば再連立する』という意味であり、高市氏が理由でない証拠だ」と解釈しているようですが、違うでしょう。自民党の「古い体質」を考えれば、連立離脱の打撃を受けた党内の矛先は、「企業献金の規制」よりも「高市下ろし」に向かうと予想されます。つまり斉藤代表の「再連立を検討するタイミングは次々回の首相指名選挙になる」というのは、高市氏以外の総裁が就任していることを念頭に置いた発言です。
それをむざむざと自分から暴露した自民党議員がいらっしゃいます。船田元(はじめ)議員です。彼は公明党との協力関係の重要性を主張し、石破氏の退陣を撤回してもらうか、総裁になったばかりの高市氏に引いてもらい、総裁選をやり直すべきと提案しております[8]。これはもう「公明党の連立離脱は高市氏が原因である」と認識しているのを白状するようなものです。彼は「政権を放り出すのは無責任」と言っていますが、彼の提案の方こそ無責任であり、非常識極まりません。なぜならそれは事実上、総裁選の意義や党員票の価値を否定していますし、本当にやったら党としての自律性を完全に放棄させることになります。もはや自由民主党ではなく、公明民主党に改名しなければなりません。
以上を考慮すれば「政治と金」問題はあくまで口実か、数ある要因の一つに過ぎず、単一の理由と断定するには無理があると結論付けることができるのです。他にも高市氏が公明党に対する感謝が足りないといった非礼説や、麻生氏の影響力が人事に反映されたからとする人事説、国民民主党との連立模索に腹を立てたとする浮気説がありますが、どれも斉藤氏本人が否定しており、離脱の理由として十分な根拠を持っているとは言い難いでしょう。
中国大使との会談と公明党の行動理由
なお公明党離脱の裏に中国がいるのではないかという疑惑について、10月6日に斉藤代表が議員会館で中国の呉江浩駐日大使と会談していたことが、ネット界隈で注目されました。これに対し、斉藤氏自身は「中国側から何かしら指示があったわけではない」として、関係性を否定しております[5]。
親中派の本質
はっきり言って、彼の発言に嘘偽りはないでしょう。保守派の多くの人が勘違いしていますが、公明党を含めた多くの親中派は、中国に魂を売っているわけではなく、日中友好が日本の国益になると固く信じている人たちです。つまるところ利害関係や個人的な心情、思い込みによるため、中国の命令を嬉々として受け取るわけではありません。中国としても他国の一政党の政策に口出しして、同党との友党関係を壊すようなことはしないでしょう。
なら全くの無関係なのかと言えば、そうではないでしょう。先述のReHacQ(リハック)ではプロデューサーの高橋弘樹氏に、大使との会談で高市総裁の話題が出たかと聞かれると、「会話の内容は外交問題であり、控えさせていただきたい」と答えました[9]。公平に申し上げれば、公開を前提としない会談の内容は、相手の同意がなければ外部に話さないのがマナーです。だから斉藤氏はあのような反応になったわけですが、呉大使との会談で高市氏の話題が出たことは間違いないと言えます。
大使の発言(推測)と斉藤代表の決意
ここからは僭越ながら私がこれまで調査した中国政府の行動原理をもとに、呉大使の発言を予想してみます。考えられるのは次の3つです。
1.我々は高市新総裁の行動を注視し、憂慮している
2.日本の首相の言動は中日関係に重大な影響を与える
3.我々は日本が基本的原則を守り、中日関係の建設的で安定な関係を目指すことを希望する
以上はいずれも呉大使の中国側としての立場と希望を表明した言葉です。すなわちそれは高市氏の「右翼的」行動に関して、関心を持っており、その行動を懸念していること、そしてそれが日中関係に影響をもたらすことを斉藤代表に伝えたと考えられます。斉藤氏にとって当初それは「靖国参拝」だと思っていたはずです。しかし9日に南モンゴルの人権問題で高市氏が中国を非難したこと、10日に台湾の頼清徳総統に親書を送ったことはレッドラインを超えたとみなされた可能性があります。特に頼総統に親書を送ったことは、日中間の基本文書「日中共同文書」に抵触する大事です。
この状況で公明党が取れる最良の選択肢は「連立離脱」以外にありえませんでした。連立を維持することは高市氏の行動を支持することになるからです。おそらく彼らにとっても青天の霹靂だったと思います。靖国参拝を見送ると言ったと思ったら、中国を名指しで非難し、中国が敵視する人物に親書を送ってしまうのですから。高市氏の率いる自民と縁を切らなかったら、公明党が長年築き上げた中国とのパイプが失われてしまうかもしれない。実際、岸田政権で日中関係が悪くなった時も、公明党はぎりぎり中国との関係を維持していました。だから斉藤氏は公明党と中国の友好のために高市氏を蹴る決意を固めたと考えられるのです。
これが中国の分断工作です。親しくして利害関係を結ばせて、おのずと中国の意に沿うことをしてしまう。それが日本の国益のためだと信じて疑わない。今後台湾問題が緊迫化していくうちに、このような突飛な行動は、中国との関係が深い団体の中で次々と見られることでしょう。そしてそれらのほとんどは、中国の指示ではなく、彼らの意思によるものなのです。
与党から抜けたい公明党の事情
ここからは中国問題説を一旦わきに置いて、公明党そのものの事情を掘り下げてみましょう。すると同党には自民党との手を切らなければならない、重大な問題に直面していたことがわかります。
自民党を支えられない
一つ目の問題は斉藤自身が語っていらっしゃるように「自民党の不祥事について支持者らに説明することが限界になった」というもの。これは第一章で疑問を呈した「政治と金」問題を理由としたものですが、それは単なる「自民党の尻ぬぐい」というレベルではなかったのです。
総裁選当日において次期首相が直面する地雷だらけの日本政治と外交を投稿させていただきましたが、その一つ目の地雷である「増税を許さない国民」において、自民党への不満が憎悪に変わっていると書きました。それは単なる不祥事に国民が怒っているのではなく、長年続いた不況と繰り返された社会保障費の増額や増税への恨みです。日本国民は民度が高いので、多少の負担増加は社会のためだと信じて容認していました。デフレ時代は企業の努力により物価が下げられ、生活費の工面もやりやすかった側面もあります。しかし武漢熱やウクライナ戦争、米ドル利上げによる円安進行で企業は物価を上げざるを得ず、国民の生活は困窮することになります。
しかし時の総理大臣は財政規律を優先する岸田氏。それはこれ、これはそれとばかりに出される増税方針に国民の不満は高まります。そこに出たのが「裏金問題」です。国民が生活を切り詰めて税金を払っているのに、自民の先生方は平気で所得を隠して脱税している。それが国民の怒りに火をつけました。さらに減税に消極的な税調会長や、消費税を守ると宣った幹事長の存在も火に油を注ぎます。そして日本人の主食であるコメの値段が上がったことで、ついにマグマは噴出したのです。
これはとても「支持者らに説明できる」ものではありません。物価高は国内のインフラ整備のコストも引き上げ、緊縮政策が財政出動を妨げます。それは国土交通大臣のポストの存在感も減退させるでしょう。自民党への憎悪はいつしか公明党にも及ぶかもしれない。そして公明党の支持母体である創価学会の学会員たちも日本国民です。「憎い自民とは手を切れ」という声が上がってきてもおかしくないでしょう。学会に見放されたら大臣どころの話ではありません。
創価学会の衰退
二つ目はより根源的な問題で、公明党の支持母体である創価学会の組織力が低下しているというもの。特に「集票マシーン」としての存在に陰りが出ているのです。下図はブロガーの新宿会計士さんが作成した、2007年から今年(2025年)までの公明党の比例得票数の推移です。御覧の通り、2009年の自民が下野した選挙では805万票も獲得していたのに、今年は521万票にまで下がっております。これは単なる「裏金問題」で片づけられる問題ではありません。

その理由としては高齢化が識者の間で指摘されていますが、現役学会員や元学会員がnoteにて公明党衰退と創価学会衰退の背景を解説してくださっております[11],[12]。詳しい内容には踏み込みませんが、自公連立を維持するための選挙活動を優先したがために、将来世代の育成がおろそかになり、選挙に勝っても生活がよくならない不満から、離脱者も相次いでいるということです。
ここに前項の自民党への憎悪が重なったとすれば、もはや公明党存続の危機感を斉藤氏らが抱いてもおかしくはないでしょう。つまり組織としても「限界」が来ており、例えポストを失うこととなっても、自民党から距離をとって党勢回復に努めた方がいい。そう判断しての離脱宣言に至ったと考察することもできます。これなら彼が「誰がなっても同じ」と答えたこととも整合性が取れます。
祝!自公離婚
以上が公明党が自公連立から離脱した真相の考察になります。総合的に見れば後者の公明党と創価学会の内部事情が主因であると言えるでしょう。その一方で、今の今まで離脱決断を留保し続けたのは、自民党の「企業献金規制」への期待だけでなく、日中関係改善の役割として自分達が必要とされている自負があったからだと、私は思います。それが高市氏の行動によって完膚なきまでに打ち砕かれたことで「今の自民党とは価値観が合わない」という結論に達したのでしょう。
本ブログでは中国の覇権主義問題を扱っている関係上、公明党は親中勢力として厳しい評価の対象となっております。しかし、私は今回の斉藤代表の決断を支持し、大いに評価します。なぜならそれは長年自民党を縛っていたしがらみを解き、迫りくる日本の大転換に対応する大きな契機になるからです。そして公明党と創価学会にとっても26年間のしがらみから解き放たれる良い機会になりました。実際、離脱後の斉藤氏は非常に晴れやかです。これからは野党の立場で思う存分に「保守中道(中国とともに生きる道)政策」に励むといいでしょう。
これから自民党は本格的な立て直しに入ります。船田氏のような党の自律性を否定する議員はしばらく騒ぎ立てるでしょうが、公明党なくしても自民党がやっていけることが「責任政党」としての本来の在り方です。目先の数合わせと妥協に走らず、非常識な手段を使わず、転換期にある国を導く体制を整えることが、国民の信頼を回復する唯一の手段です。
参考情報
[1]:自民西田昌司氏「とってつけたような話だと思う」公明の連立離脱に「執行部が」,日刊スポーツ新聞,2025.10.11.,https://www.nikkansports.com/general/nikkan/news/202510110000257.html [2]:【連立離脱】橋下徹氏、日曜朝からぶっ込む「なぜ総裁選の途中で主張しなかった?」公明・斉藤代表を直撃「ちょっと違うんじゃないか」,デイリー,2025.10.12.,https://www.daily.co.jp/gossip/2025/10/12/0019581361.shtml [3]:自民新総裁に公明が異例の注文「連立は保守中道の方と」斉藤鉄夫代表が言及,西日本新聞,2025.9.12.,https://www.nishinippon.co.jp/item/1398699/ [4]:小泉進次郎が訴える”企業・団体献金禁止”の末路、「政党がお互いの収入源をつぶそうとして泥仕合が始まりかねない」,東洋経済オンライン,2025.3.27.,https://toyokeizai.net/articles/-/867313 [5]:【緊急】公明党斉藤代表が“連立離脱の真相”をすべて激白!,公明党サブチャンネル,https://www.youtube.com/watch?v=GIgch0dGKR4 [6]:石破首相の独断に自民党内で反発広がる…企業献金見直し巡り党内議論なく立憲民主へ接近,読売新聞,2025.8.8.,https://www.yomiuri.co.jp/politics/20250807-OYT1T50274/ [7]:公明党・斉藤代表、再連立の可能性に言及 次々回の首相指名時に,日経新聞,2025.10.12.,https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA1133U0R11C25A0000000/ [8]:自民・船田元氏「石破首相の退陣撤回」「高市氏退き総裁選やり直し」案言及 公明連立離脱,産経新聞,2025.10.13.,https://www.sankei.com/article/20251012-JCSGTPIEHVB3FCCASLFGB7CLMU/ [9]:連立離脱直前に中国大使と面会の公明党・斉藤代表、高市氏についての内容は「そ、それは、あのー…控えさせて」,よろずーニュース,2025.10.12.,https://yorozoonews.jp/article/16087339 [10]:新宿会計士, 余談:公明連立離脱がもたらした「とても大きな成果」,2025.10.12.,https://shinjukuacc.com/20251012-01/ [11]:庶民が王者,現役創価学会員が考察 なぜ創価学会・公明党は衰退したのか? ,note,2025.8.23.,https://note.com/soka_0503/n/ne6b3b16a9b78 [12]:神山キョウヘイ,元創価3世信者が思う「創価学会の衰退の最大要因」を聞いてほしい,note,2025.10.12.,https://note.com/notetaker07/n/nc755c5744aeb